吉田大使によるデロ(DELO)紙への寄稿(2026年8月29日)
日本とスロベニアの価値ある絆
3年前にスロベニアに赴任すべくこの地に降り立って以来、私はこの国の歴史と人々を知るにつれ、その賢明さと静かな強さに深い敬意をはぐくんできた。中欧とバルカンの交差点に位置し、複雑な歴史を経験しながら、スロベニアは1991年の独立後の短期間に、安定した民主主義、高度な産業、成熟した市民社会を築き上げた。
日本とスロベニアは、地理的には遠く離れている。しかし、国際法を尊重し、民主的で安定した社会を維持し、科学技術と人材によって未来を切り拓こうとする姿勢において、両国は極めて近い位置にある。両国をつなぐ言葉は「信頼」と「レジリアンス」である。
日本は、戦後一貫して平和国家として歩んできており、国際社会の安定と繁栄に貢献してきた。長年にわたり、政府開発援助を通じて近隣のアジア諸国のインフラ整備、人材育成、産業発展を支え、その成長と安定に寄与してきた。さらに、世界各地における開発協力、人道援助、平和維持活動、紛争後の復興支援を通じて、国際社会の基盤を支えてきた。日本のこの一貫した姿勢が国際社会に受け入れられてきたことは、国連安保理の非常任理事国として最多の当選回数を誇っていることからもうかがえる。
今日、私たちを取り巻く国際環境は大きく変化している。ロシアによるウクライナ侵略は、国境を力によって変更してはならないという国際秩序の根幹に対する挑戦である。日本は欧州諸国とともに、ウクライナに対する揺るぎない支援を継続し、対ロシア制裁にも協調して取り組み、国際社会における法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組み続けてきた。これは、欧州だけの問題ではなく、国際法と法の支配が世界のどの地域においても等しく守られなければならないという原則に基づくものである。
同時に、日本は近年の安全保障環境の変化を受けて国家安全保障戦略を改定し、自国の防衛能力を高めるとともに有志国との連携を深めている。NATOのアジア太平洋地域のパートナー国(IP4)の一つとして日NATO協力を進めており、本年4月にはNATO加盟国の代表部大使が日本を訪問し、東アジアの安全保障環境や日米同盟の役割について理解を深めた。また、日EU間においても経済安全保障、サイバーを含む幅広い分野で協力が深化している。
こうした日欧協力の進展を背景に、日本とスロベニアも、物理的な距離は遠いながらも、民主主義、人権、法の支配という普遍的価値を共有する信頼できるパートナーとして、安定的に関係を強化してきた。
今日、軍事、技術、経済はそれぞれに独立したものではなく、不可分なものとして発展してきている。いまや経済安全保障は安全保障そのものであり、信頼できるパートナー国との協力深化が求められる時代になっている。この文脈において、日本とスロベニアの関係には大きな可能性がある。
経済安全保障の時代において、最も貴重な資源の一つは、技術そのものだけではなく、相互に信頼できる関係である。本年2月には日スロベニア政府間において科学技術協力会議が開催され、エネルギー、AI、ロボティクスなど両国間の協力分野について議論がなされた。両国は、ともに高い教育水準と研究開発能力を有し、高度な製造業を経済の重要な基盤としている。日本のみならず世界を代表するロボティクス企業の安川電機が欧州における製造・流通拠点としてスロベニアを選んだことは、両国の産業協力のポテンシャルを示すものである。
今後、日スロベニア関係は、政府間の対話にとどまらず、企業、大学、研究機関、地方自治体、そして次世代を担う若者を結ぶ、多層的な関係へと発展する段階を迎えている。研究成果を共同事業へ、技術的な強みを産業競争力へ、そして人的交流を長期的な相互理解へとつなげていくことが求められている。日スロベニア間の協力関係の深化が、価値観を共有する日本と欧州の民主主義国の競争力とレジリアンスの強化につながることが期待される。
(スロベニア語寄稿文)